認知症病棟とは...

認知症症状による著しい行動および心理的な異常が見られ,自宅や施設において日常生活を送ることが困難な方に対し,短期集中的な治療とリハビリテーションを実施し生活能力の回復を図る病棟です。

医師,看護師,作業療法士,心理士などの専門スタッフの援助のもと1日4時間の生活機能回復訓練を実施します。

生活機能回復訓練について

入院患者さんの生活能力を活性化し,また潜在能力を発掘し,認知症の改善・進行の防止,身体能力の維持・向上を図るための訓練です。

大別して個人活動と集団活動があり,個人活動においては食事・更衣・排泄等の援助や誘導による日常生活行為の自立や歩行訓練等の運動療法による筋力の維持や身体バランス感覚の改善等を目指します。

集団活動ではレクリエーションや回想法,院外活動を積極的に取り入れ,孤独感の解消や情緒の安定,生きがい作り,社会性の回復を目指します。

生活機能回復訓練プログラム例
日常生活行為(ADL)訓練

身辺処理能力の低下している方に対し,整髪や髭剃り等の自立の援助や訓練を通して自己への関心を高める機会を作ります。

創作活動,調理活動

手指の運動は脳内の運動野や感覚野を活発に働かせ,認知症の改善や進行の防止に効果があると言われています。
また創作作品の完成は達成感を満足させ,不安を抱えた高齢者が自己の存在を確認する機会となります。

レクリエーション

音楽会での合唱やゲームでの全身運動は日中の活動性を高め,夜間不眠の改善や昼夜逆転を防止します。
また心肺機能・免疫力の向上や関節可動域の維持を図り体力作りの手段として活用しています。

回想法

高齢者に対する心理療法的アプローチです。
支持的・共感的な聞き手が、高齢者の人生の歴史を傾聴することを通じ、高齢者の心理的安定やQOLの向上を図ります。

運動療法

平行棒,昇降台,肋木,姿勢矯正鏡,マット等を備え付けており,これらの器具を利用した歩行訓練などの運動療法を行います。

院外活動

社会適応訓練の一環として毎月近くのスーパーへ買い物へ行ったり,時間や場所の見当識訓練も兼ねて花見等の季節行事を行っています。
園芸などの趣味的活動を取り入れ,自己表現のできる機会を作り,生きがい作りの一手段として利用しています。

三和中央病院の認知症病棟の治療方針

認知症の症状だけでなく、認知症患者として診る、看る。
認知症の必然的合併症である内科も診る、看る。(内科医と精神科医が協力して担当)
老年期認知症患者さんの症状は全員が異なるので、個別の治療、看護計画を立てます。
専門医師による薬物治療、「説得より納得」「感情ボケない」などの基本を踏まえた看護、介護、病棟における「なじみの社会」の構築が治療にあたっての3本柱です。
これ以外にも例えば認知症で最も問題になる嚥下困難に対しては管理栄養士が「嚥下訓練食」を準備して対応します。
治療過程において老年期内科が主たる治療目的になっても入院治療を継続します。
その他、老年期うつ病、老年期幻覚妄想状態の患者さんにも対応して治療にあたります。

認知症患者さんの嚥下困難への対応

当院では認知症と内科疾患を併せて診る(看る)ことを治療方針としています。
認知症の患者さんに限らず、高齢者の方には嚥下が困難になっている場合が多いようです。
その理由としてパーキンソン病や仮性球麻痺などの合併症や抗精神病薬の副作用によるものが考えられます。嚥下障害が見られますと、誤嚥性肺炎をおこしやすくなります。
これらの要因をできるだけ取り除くとともに、栄養士や歯科医と連携して治療にあたることが大切です。