大会長挨拶


医療法人 清潮会 三和中央病院

院長 普@稔

ご挨拶

広げよう! 依存症の回復と支援
-モノからコトへの依存症対策-

 九州アルコール関連問題学会が誕生してから30歳を迎えました。人間でいえば成熟期といえるでしょう。この間、時代とともに依存症の概念が広がってきました。現代人は、アルコールや薬物という物質(モノ)への依存に留まらず、ギャンブル、インターネット、ショッピングなどの行為(コト)へと依存対象を拡大させ、肥大した自己欲求を満たそうとしています。その根底には、現代人の固定化された生き方の問題があるでしょうし、社会の変化も規制緩和の名の下に、長時間労働を強いられ心身共に疲弊し、個人の自由が奪われてきた点もあげられます。その結果、自殺者の増加や依存症の発症として現れてきました。このような時代だからこそ、依存症の回復と支援が必要なのです。

 依存症への法整備として、アルコール健康障害対策基本法が平成26年6月に施行され、平成32年度までに推進計画が求められていますが、各自治体の取り組みには温度差があるようです。薬物依存症対策では、平成28年6月に刑の一部執行猶予制度が導入されましたが、社会参加には多くの問題が残されています。また、カジノ法案が成立してギャンブル依存症対策が注目されていますが、実は日本のギャンブル人口は諸外国と比較して突出しており、ギャンブル依存症対策は長く放置されてきました。したがって、これらの法整備を契機にモノからコトへの包括的な依存症対策の根本的な仕組み作りをこれから作り上げていくことが求められています。

 今大会の4つの分科会では、基礎講座に加えて、近年依存症との親和性が問題となっている発達障害との関連性を取り上げました。また、これからの依存症治療における地域と医療との連携の取り組みを紹介していただきます。さらに、依存症の回復と支援に大きな役割を担うコメディカルの関わりについても各方面から話題提供をしていただきます。ご承知のように、全国ではIR誘致に手を上げていますが、長崎県もその候補地です。そこで、市民公開講座では、まず、ギャンブル依存症をはじめとする依存症への啓蒙活動として医療、家族、行政の立場からお話しをしていただくことで、一般市民の皆さんへギャンブル依存症への理解が深まることを願っております。

この30年を節目に、成熟期にある本学会が新しい視点から更なる依存症への対策を広げていきたいと思います。









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